疑問:特異クラスの構文の不思議

Rubyの特異クラスは以下のように書きます。

class <<obj
  # ...
end

ここで、"<< obj"という構文で、特異メソッドを定義するために「objという特定のインスタンスに固有なクラス」を仮想的に指定しています。これが特異クラスです。
ところで、どうして "<< obj"という構文なのだろう? というのが疑問です。いや、もちろんただの構文といえば構文なのですが、ここで不等号をこういう風に使う積極的な理由がよくわからなかったのです。
たとえば、Rubyでは、クラスの継承関係は"Child < Parent"と表現しますね。そうすると、不等号の開いているほうが継承関係でルートに近い。
継承関係と、クラス・インスタンスの関係は別なので、継承関係は "<" で、クラス・インスタンスの関係は "<<" で表現することにすると、"特異クラス << インスタンス" よりも "インスタンス << 特異クラス"のほうがぴったりくるのです。
特異クラスには名前がないのですが、仮にεと書くと、

class ε >> obj
  # ...
end

のように書くのが自然ではないかな、と思いました。ここでεを省略すると、

class >>obj
  # ...
end

が自然では。
勝手な考えですが、みなさんどう思いますか?
追記:
sumimさんが特異クラスの構文が出てくる[ruby-list:4677]を教えてくださいました。ありがとうございます。
これを見て気づいたのですが、Matzさんはこのメールで class << obj と書いていますね(<< の前後にスペース)。でも『オブジェクト指向スクリプト言語Ruby』では、<< の前にしかスペースはありません。だから何というわけではありませんが、メモ。
追記:
Matzさんからじきじきにコメント+ご説明をいただきました。感謝します!

元々は「クラスのようにオブジェクトごとの属性を取り扱うためのplace holderを『引き出してくる』」というニュアンスで「<<」を採用したんだったように思います。当時の構想ではあれは実はクラスではなかったのです。
が、実装の都合上クラスオブジェクトを使ったらそのまま定着してしまいました。今ではあれは特異クラスと言うクラスであるということで決着しています。

余談ですが、実は「特異クラス」という単語の適切な英訳はまだ見つかっていません。日本起源の言語ならではの問題ですね。
現在、「singleton class」と「eigenclass」が拮抗している感じですね。
前者はsingleton patternに登場するクラスとの混同が起きるという反対意見があり、後者は一見して意味が分からない人が多い(eigenは「固有の」という意味の接頭辞)という反対意見があります。

追記:考えてみれば、特異クラスはインスタンスから「(いわば泥縄的に)作られる」わけで、" << obj "の形も何となく気持ちが分かってきました。
追記:弾さんが反応。 「特異クラス」のあだ名
「Matzさんはどうして両方の文法を用意したのだろう」と弾さんが書いていらっしゃいましたが、特異クラスは特異メソッドの定義に使うだけではなく、特異メソッドのaliasを作るのにも使えるのではないでしょうか。実はそれがrubycoの元々の疑問だったので。
追記:弾さんの記事にまつもとさんが「メソッド定義以外の操作をオブジェクトごとに行いたかったからです」とコメントしていた。「undefとかaliasとか定数定義とか」